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100マイル・ロス

先日、トレイルランニングフォーラムに出席した際、午前の結びで石川弘樹さんがトレイルランニングの多様性についてのお話をされていました。

かつて山岳マラソンや山岳耐久レースといったようなごく一部の人たちによる競技が、レジャーやトレーニング、エクササイズ、ファッションといった要素が加わり、地域興しやビジネスといった面からも積極的にアプローチされるようになって、今では年間数百もの大会が開催され、プロアスリートも数年前に比べるとずいぶん増えて活況を呈してきました。

ここからは個人的感想ですが、しかし不思議なことに昨年くらいから以前大会でよく見かけた有名ブロガーの方々やいわゆる「チーム」の人たちをパッタリと見なくなってきました。

先月出た雑誌ラン+トレイルに特集として「100マイル後の失速。燃え尽きない方法を考える」(表紙タイトル)という記事があり、ちょっと前まで大会でよく見かけた青いTシャツのチームリーダーの方の記事が載っていました。

内容的には前半2/3が自分のランニング歴、後半が大会に頻繁に出られなくなった理由と今後の希望、という自分語りで「燃え尽きない方法」というにはあまり参考にならないものでしたが、100マイル完走後に燃え尽きた、という話はよく耳にします。
いわゆる「100マイル・ロス」でしょうか。

いまでも、トレイルランニング雑誌やブログなどでは「いつかは100マイル」「目標!UTMB・UTMF!」という言葉を目にします。

鏑木毅さんのトレイルランニングの発展に対する貢献は疑う余地はないのですが、その功績のうち100マイルレースを「謳いすぎた」事だけは多少問題だったのではないかと思います。

トレイルレースで30キロを完走出来たら、次は50キロ・70キロ。そしていつかは100キロ・100マイルというステップが当然の様にいわれていた時期がありました。今でもそう考えているランナーは多いと思います。

ロードでは、はじめは10キロレース、それが完走出来たらハーフ、そしていつかはフルマラソン、というのがある意味「常道」ですが、一般の人はそこで大体満足するもので、そこからウルトラに行く人はグッと減ると思います。

ところが、トレイルだとはじめから「普通の人」の目標が160キロというとんでもない距離にされています。ロードのフルマラソンは完走後、じゃあ次はタイムを縮めて、とか、違うコースも走ってみたい、という事が割と容易に考えられますが、160キロでは目標が高すぎて、完走してじゃあ次、となりにくいと思います。
なぜならロングトレイルは労力、費用、日程調整と相当ハードルが高いからです。
また、ポイントなんてものも必要になります。

トレイルランニングに何を求めるかは、その人その人で異なるものですが、「達成感」に重きが置かれてしまうと、達成した後目標を失ってしまうでしょうし、そもそも「達成感」であれば仕事でも他の趣味でも何でもよかったりします。


ひるがえって、自分はトレイルランニングの何が楽しいのだろうと考えると、ありきたりながら木漏れ日のシングルトラックを一人疾走したり、森の中から急に景色が開け、遠くの山並みが見回せたり、テクニカルな下りを気持ちよく駆け下ったりする事なのかな、と思います。
それがさらに「大会」だと一度も行ったことのない場所に最低限のリスクで、単独行では回りきれない程の距離を巡る事が可能になります。また、温泉や土地の食物を味わうなど、ちょっとした旅行も兼ねますし、スポーツとして人と競い合うという要素も加わってきます。

去年から、自分のエントリーの中心がショートレンジになってきたのは、大会の前後のストレスが少ないこともあるような気がしています。
ショートの大会だと、朝出て走って、終了後温泉に入って土地のものを食べたりお土産を買って、その日のうちに帰って翌日仕事、というような事を毎月続けられます。

これがロングレースだと先に書いたように準備、資金、終了後のケアに相当労力(あるいは財力)が掛かります。年一回だけなら問題ないかもしれませんが、その前にポイント獲得でミドルやショートレースなどに出て「調整」したりするとまた負担が大きくなります。

趣味の問題なので私個人がどうこういう事ではないのですが、トレイルランニングというアクティビティの黎明期(山岳耐久や山岳マラソンでない)から関わっている身からすると、何となく燃え尽きたり、やめてしまうのはもったいないなぁ、というのが実感です。




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by run-lenotre | 2017-01-12 21:18 | トレイルレース